アキとの出会いは「PIL」
高校生の頃、中野サンプラザでPILのコンサートが開かれた。サンプラザ前の広場でアキこと久保田安紀と初めて出会うことになるのだが、お互いにそれぞれの存在だけはよく知っており、会えるのを楽しみにしていたため、それはそれはエキサイティングな初対面の挨拶を交わすこととなった。
「あなたが『さとえ』ね⁉︎」
「『アキ』なのね? やっと会えたー!」
今のようにSNSなどない。スマホもない。PHS もポケベルもなく、待ち合わせに遅れる時は駅の伝言板を利用せざるを得ない時代の話。
噂話だけは散々聞いていたので、名前を確認した直後には「本物だあ」「やっとだね」「うれしいよ」などと言い合い、それからは「きゃー」「キャー」「Kyaaa!」と無駄に絶叫してはケラケラ笑った。
この時の出会いについては、20代になっても30代になっても40代になっても私たち2人の会話に登場した。
「アキはリストバンドした腕を振り上げながら満面の笑顔だった。パンクスのファッションで笑顔だったよね〜」
数年に一度、必ず話しては笑っていた。
PILコンサート会場での出会いから約3年後、私はアルバム『赤色人形館』を作るために楽曲を準備していた。『黄金伝説』では、人々の祈りの声にこの世のものではない女神の叫び声を乗せたかった。その声がないと成立しにくい楽曲だった。
「アキしかいない」
まわりの方々も同意見。アキの音域も確認せずにコーラスをお願いしたところ快諾してくれた。レコーディングではアキが通常使っている音域を超えてしまう音符もあったのだが、そこはさすが久保田安紀。
数回の調整で、超人的なコーラスをいれてくれた。アキの歌が入り『黄金伝説』は強いメッセージを持てたと思う。
アルバム『赤色人形館』は私が広げたベルベット生地に個性豊かなミュージシャンがカラフルな宝石を散りばめてくれたような音源。アキのコーラスも、エディの鍵盤も……この辺りは、またの機会に書きたいと思います。
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